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日常思った事やイベント参加の感想を書いていくブログです

仮面ライダーBLACK SUNの感想 ※ネタバレあり

2022年10月28日とりAmazon Primeで配信開始された仮面ライダーBLACK SUN。
企画発表時から仮面ライダーBLACKをリブートした作品という事で期待しており、配信開始から数日で勢いで全話見終わりました。自分の中で感想を咀嚼しきるまで時間がかかったりブログを書く元気が無く文章にするまで凄く時間がかかったのですが、纏めれましたので感想を書いていきます。

ガッツリ作品内容に触れているので、未見の方はご注意ください。

 

2022.12.25 一部文章を追記や修正

2023.01.19 もう一度見直したので感想追記・修正

 

 

 

<作品の世界観>

舞作品の舞台は怪人と人間が共存している世界で、現代編と50年前の過去編を交互に交えながらストーリーが進んでいきます。

共存というものの怪人は人間に差別・迫害されております。この世界の怪人は人間を軽く投げ飛ばしたり耳を嚙みちぎったりするような力はあるものの、拳銃で射殺されたりリンチされて命を落とす位の戦闘力で、強力な怪人も警察の特殊部隊相手とは相打ちになるくらいの強さです。

そんな世界で自分たちが生き残るため各々の考えで行動する怪人達やそれを利用しようとする者たち、それに関わる人間たちによる群像劇となっています。

 

<よかった所>

 俳優陣の演技

主演の西島 秀俊さん、中村 倫也さんを始めとした俳優陣の演技がよかったです。

西島さん演じる南光太郎はテレビ版の青年とは違い年老いたダーティーな雰囲気で、レオンとかターミネーター2のT-800とかを連想しました。第5話で初めて変身する時の雰囲気が圧巻だったのに加えて変身ポーズがテレビ版のそれをしっかり踏襲していて様になっているのがよかったです。

中村さん演じる秋月信彦もかっこよく、7話の終盤で一線を越えて変身するシーンは圧巻だったし、それ以降ゴルゴムのトップになってからの色気や雰囲気も凄かったです。

他にもヒロインの葵、三神官、蝙蝠怪人や鯨怪人たちなど、俳優陣の演技もあってみんな印象的で個性的なキャラクターになっていました。

特にビルゲニアに至ってはヒロインの葵の両親の命を奪い、葵も蟷螂怪人に改造してしまったりと物凄くイヤな奴なんだけれども、途中で落ちぶれていって最後の最後に自分の信念をもって戦い死んでいくのがよかったです。スタッフ座談の動画で「ビルゲニアに向き合わなければならない」と言っていたけど、向き合いすぎだろ…。

そしてこの作品一番の悪役、というか嫌な奴であろう今野 浩喜さん演じる板垣とルー大柴さん演じる堂波総理。どちらも怪人へのヘイトスピーチを行ったり私腹を肥やすため怪人を足蹴にして利用したりと視聴者のヘイトを買うようなキャラクターだけど、どちらも実際にいそうな雰囲気や言動をしているのが素晴らしかったです。凄く嫌なキャラクターだけに両者とも最後の瞬間を迎えた時は少しスカッとした気分になりました。

 

 ライダーや怪人のデザイン

BLACK SUNとSHADOWMOONについて、最初は両者とも飛蝗怪人の姿に変身しており、仮面ライダーBLACK SUNと仮面ライダーSHADOWMOONに変身するのは中盤以降となっております。
新たにデザインされたBLACK SUNとSHADOWMOONはテレビ版のヒロイックなデザインから生物感のあるデザインになっています。これにはテレビ版の変身途中のバッタ男状態や漫画版BLACKのデザインを連想した人も多いでしょう。最初見た時は少し不安も感じたが、予告で動いたりアクションしたりしてるシーンを見ると凄くかっこよかったし、実際の本編の動きもよかったです。胴体から生えている足をもぎ取って剣にして戦うのもカッコいいけど、抜いた足が再生しないのは覚悟決まりすぎだとも思いましたが…(このため剣を使えるのは生涯2回のみ)。

怪人についてもテレビ版は生物感のある恐ろしいデザインでしたが、BLACK SUNはより生物的な面や異形な雰囲気を前面に出してきました。人によって好みはあるでしょうが、BLACK SUNのデザインも好きです。ビルゲニアの変身しても顔だけ人間なのはテレビ版のリスペクトなのですがちょっと雰囲気が浮いてて知らない人が見たら色々ツッコむかもしれないです。

 

 テレビ版BLACKへのリスペクト

そして本作はテレビ版BLACKへのリスペクトも忘れておりません。

・光太郎と信彦が手に嵌めたフィンガーレスグローブ(BLACKと言えばコレ!)
・テレビ版を踏襲した変身ポーズ
・SHADOWMOONの変身ポーズはBLACK SUNを反転させたもの
・変身で飛蝗男の過程を挟んで変身するBLACK SUNとSHADOWMOON
・BLACK SUN(光太郎)に液体(テレビ版では命のエキス)をかけて蘇生する鯨怪人
・怪人体になっても顔だけ人間のビルゲニア
ゴルゴムと戦う少年兵
・心臓だけになっても生きてて吊るされてる創生王
仮面ライダーBLACKのOP歌詞を英訳した文字が登場(9話の廃バス内)
・10話のテレビ版OP再現

パッと思いついただけでもこれだけあり、探せばもっとあるかもしれないです。
白石監督がBLACK見てハマってしまったと言われてたのに加え10話のテレビ版OP再現を見て「製作陣は本当にBLACK好きになったんだなー」と思わされました。

 

<気になった所>

 変身シーンや戦闘シーンが少ない

まず光太郎と信彦は最初は飛蝗怪人の姿に変身して戦っていますが、変身ポーズをとって仮面ライダーの姿に変身するようになるのが光太郎が5話、信彦が7話終盤と遅いです。

戦闘シーン自体も全体の尺に対して少なく感じました。戦闘よりドラマの方に尺を割いているからしょうがないのかもしれないだけれども、もっと怪人やライダーが戦う姿が見たかった。例えばゴルゴム党本部に突撃しにいく話でも怪人が戦闘中に人間の姿に戻って倒されてたり、終盤で葵を助けに来た蚤怪人と鯨怪人が人間の姿だったりと、そこは変身したほうが…と思う箇所がありました。
※追記:見返した所、蚤怪人と鯨怪人について葵が立ち去る場面で変身して戦っていました。敵の怪人集団と区別が付かないから最初は人間体で登場させて、後から変身させたのかも。

加えて、ダロムやバラオムといった重要キャラが組織内のゴタゴタで殺されてしまうのは勿体なかったです。赤軍派の身内での殺し合い的なものを再現・表現したかったのだろうけど、それならそれまでの話でもっと戦闘シーンを入れて欲しかったです。

(逆に毎週一定の戦闘シーンを入れて30分番組作っている東映撮影チームって凄いんだなーと改めて感じました。)

仮面ライダー」というタイトルを背負っている以上、仮面ライダーや怪人の戦闘シーンを楽しみにしている層もいるのだから、もうちょっと戦闘シーン自体増やすとか怪人の姿で戦う場面を増やして欲しかったです。

 

 現代と過去の入れ替わりが分かりにくい

現代編と過去編が入り混じって話が進んでいくのだけれど、シーンの切り替わりが分かりにくかったり人物の区別が付きにくかったりしました。同じように過去編と現代辺が入り混じって話が進む仮面ライダーキバが苦手な人は本作も苦手かもしれないです。

 

 チグハグな設定、テレビ版見てないと分からないネタなど

チグハグな設定やテレビ版BLACK見てないと分からないネタもあったかな、と思いました。

・怪人が戦前に誕生した存在の割には自分たちのルーツを知ってる怪人が少ない
 (葵の国連スピーチでの暴露で一般怪人が驚いてたり)
・身体から気軽に取り出せるキングストーン(変身にも影響なし)
・怪人達の呼び名が蝙蝠、鯨などで元々の人間名が無い(出てこない)、ダロムやバラオムなど日本名でも生物名でもなさそうな名前のキャラがいる
・鯨怪人がBLACK SUNにかけてた液体の説明が劇中で皆無

他にも色々あった気がするけど、この辺が少し気になりました。
怪人の呼び名については下手に人間名付けるより、蝙蝠や鯨の方が視聴者の印象に残りやすいのでそうしたのかな、と思いました。

 政治描写と最後の終わり方

そして本作が最も見る人を選ぶ箇所が作中全体の政治や思想を意識した描写でしょう。作中の怪人への差別描写は部落・外国人・黒人差別を、過去編の旧ゴルゴムメンバーの活動は学生運動赤軍派をモデル・意識したものでしょう。
堂波総理の描写が安部元総理をモデルにしたような描写もあり、色んな意味で好き嫌いが分かれれるし、仮面ライダー知らない人に気軽に勧めにくい作品になってしまった感もあります。こりゃR18になってしまう訳だ…。

そして作中の最後。最後まで生き残った葵が少年・少女兵を育てて反体制組織を作るという終わり方だけは個人的に受け入れられませんでした。作中で「思いを継ぐ」みたいな言葉が何度か出てきたけど「戦う」を継ぐのかと、それで死んでいった光太郎が喜ぶのかと…。訓練の「急所狙って」って台詞が何とも言えなかった。

例えば葵は国連で演説するようなパイプを持ってるんだから「差別は完全に無くならないかもしれないけど、それでも私は戦うよ」と言って差別反対運動に取り組む様子を描いて終わるみたいな、もう少し希望を残す終わり方にして欲しかったな、と。

「少年・少女兵を育てる」の次に待っているのは間違いなく「実戦」な訳で…。「自分の主義を唱えたり理想を叶えるため少年兵を育てる」ってまさに悪役がやりそうな事なんですけど、これがまさしく作品キャッチコピーの「悪とは、何だ。悪とは、誰だ。」に当てはまるんですね。

「自分が正しいと思っている考え、行動も外から見れば悪や間違いかもしれない」いう事を言いたかったのか、製作陣の思想・考え方なのか…。正直後味の悪い終わり方なんですけど、これによって見た人の心に残る終わり方になっているのも確かです。
下手に希望のある終わり方よりこっちの方がずっと記憶や印象に残るし、インタビューなどで「作品にメッセージ性を入れたい」「子供にも(BLACK SUNを)見て考えてもらいたい」みたいな事を言われていたので、あえて狙って後味悪い終わり方にしたのかな…と思いました。

 

<まとめ>

気になった所も沢山書きましたが、企画発表から全話視聴終えるまで楽しませてもらいました。いつもと違う製作体制の仮面ライダー作品という事でいつもと違う新鮮さも感じましたし、見た後記憶に残る作品になったのではと思いました。

R18だったり政治思想が入っていたりと自分から気軽に人に勧める事のできる作品ではないかもしれませんが、「仮面ライダーBLACKが好きな人」や「いつもと違う仮面ライダーが見てみたいという人」には見て欲しい作品ですね。

 

製作陣・キャストの皆様、記憶に残る作品をありがとうございました!

 

【2023.01.19 追記】

本作をもう一度見返す機会があり、初見だと分からなかった箇所が良く理解できたり(特に過去編と現代の繋がり)背景や演出など色んな所に気付く事ができました。
戦闘シーンが少ないまま退場したキャラも物語上しっかりとした役割を果たしており、初見と印象が変わって見る事ができました。
見返した事により、改めて本作品の持ち味を楽しむ事ができました。