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日常思った事やイベント参加の感想を書いていくブログです

「東京原発」 インパクトのあるタイトルと考えさせられる内容の作品  ※記事中ネタバレあり

先日、といっても先月ですがAmazonで何か面白そうな映画ないかなと探していたら、東京原発という映画を見つけました。

 

 

「東京都に原発を誘致する!」というキャッチコピーの字面だけでも凄いインパクトなのですが、興味を惹かれて見てみると凄く考えさせられる内容でした。
という事で、「東京原発」の内容や感想について書いてみようと思います。
※記事中ネタバレあり

 

あらすじ

ある日、東京都都知事に集められた都庁幹部職員達。そこで都知事が提案した政策は「東京都に原発を誘致する!」。政策内容や原発の安全性について賛成・反対の意見が飛び交いながら会議が進んでいく。その一方、極秘裏にモックス燃料(プルトニウム)を輸送していたトラックが都内で少年にジャックされてしまい…?

作品のテーマ

まず作品のテーマとしては真面目な内容ですが、時々ギャグやコミカルなシーンを交えつつ固い雰囲気になりすぎないようになっています。NHK教育テレビの勉強の番組を見てる感じに近いで、原発の問題や危険性について分かりやすく説明されています。
おおまかな話の流れですが

・東京都に原発を誘致する事のメリットについて

原発放射能の危険性について

原発以外の(自然・再生可能エネルギー)などについて

の順番に議論がなされていきます。
それと並行してプルトニウムを輸送してるトラックが少年にジャックされてしまい、それにどう対応する!?というクライマックスの盛り上がりと「もしも実際に放射能による事故が起こってしまったら…!?」という恐怖を描いています。

東京都に原発を誘致するメリットについて都知事が幹部職員に説明するのですが
原発政策への補助金や雇用の発生で財政赤字が解消される
原発はクリーンエネルギー
・山林開発や漁業権へ支払い、都へ送電する手間がなくなる事でコストが低い
原発冷却に使った温排水を熱エネルギーとして利用する「コジェネレーション」政策
原発新宿中央公園に建てる(小型原子炉なら足りる面積)
・東京の電力を賄うのに福島など地方の自然を破壊していいのか、自分たちだけ原発の恩恵に与っていいのか

など、ギャグシーンも交えつつ具体的且つ分かりやすく説明されています。
これだけ書かれると説得力があるように思わされるのが凄い。

一方、途中から会議に参加した大学教授により
原発立地条件のずさんな耐震基準
原発が無くても日本の電力が逼迫する事はない(火力・水力発電には余力がある)
放射性廃棄物の処理問題
・実際の原発事故(東海村チェルノブイリ)を交えた原発放射能の危険性
原発以外のエネルギー(水素・燃料電池など)
について話がされていきます。実際の出来事や数値データを交えての説明なのでイメージしやすかったです。
原発の立地条件について「国がいい加減な事をするはずがない」という意見についても「肉骨粉血液製剤など、国民は国に何度も騙されてきました(要約)」と、「国の言ってる事や政策が本当に正しいと信じていいのか?」と考えさせられる事を言われていました。
原発以外のエネルギーについては原発がメインテーマのためかあっさりめの内容でした。

 

都知事の目的


そんな危険性があっても東京都に原発を誘致しようとする都知事ですが「東京都への原発誘致」を発表する事で都民に原発反対の声を挙げさせ、日本の原発政策を変えていく事が目的である事が明らかにされます。
実際、東京の電力を賄うために地方へ原発を建てる負担を強いているのは本当の事です(地方への補助金や雇用発生といったメリットもありますが)。
原発の危険性を理由とした反対意見についても「新潟や福島に負担を強いて東京都民だけが原発の恩恵に与っていいのか、背負う命のリスクは同じじゃないのか!」と考えさせられる事を言われています。
これは東京都民関係無しに原発の電力に与っている(与ってきた)国民全てに向けられた言葉に感じました。

 

その後の日本の原発


この映画が作られたのが2004年です。この後、みなさんご存じの通り2011年に発生した東日本大震災福島第1原発が被災。原発安全神話は崩壊し、現在も核燃料の処理が続いております。作中で地震が起こった時の危険性が話されていましたが実際の出来事になるとは…。
直近ではロシアのウクライナ侵攻でチェルノブイリ原発など原発施設が攻撃・占拠されるという緊張事案も発生しております。

物語のラスト、プルトニウムを載せたトラックがジャックされる事件が解決した事で「これで原発誘致の必要が無くなりましたね」と言われたのに対し都知事は「人間は過去の事はすぐに忘れてしまう」と返し、原発誘致の政策を記者会見で発表する場面で物語は終わります。

チェルノブイリ東海村といった原発事故があったにもかかわらず、福島第1原発の事故が起こってしまった事が都知事の台詞を代弁しているように思えてなりません。

 

今だからこそ見て欲しい作品

 

原発の問題や危険性について分かりやすく説明されている作品です。
近年の世界のエネルギー政策なども交えて観ると中々考えさせられます。

作品のテーマや内容についてばっかり触れましたが、役者さんの演技や時々挟まれるギャグシーンも中々よかったです。現在より若い役所 広司さんや岸部 一徳さんの姿を見れたのは新鮮でした。ただトラックの運転手がヤケクソになって飲酒運転するのは今じゃ上映・放送できんやろうなぁ…。

AmazonPrime会員だと見放題作品になっていますので無料で視聴可能です(2022年4月24日現在)。

以上。