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日常思った事やイベント参加の感想を書いていくブログです

「ゴジラ-1.0」を観てきたので感想 ※ネタバレあり

2024年は日本の怪獣王・ゴジラ70周年。1954年11月3日に1作目が公開され、休止期間を挟みながら沢山の作品が作られてきました。

そしてゴジラ70周年記念作の「ゴジラ-1.0」が2023年11月3日に公開されました。70周年記念作という事で気合が入った本作、公開初日に観に行ってきました。いつも通り感想を書いていきますが、ネタバレ含めた内容になりますのでご注意ください。

そして大切な事。映画観てない人は絶対に観に行った方がいい!耐性があるなら4DXで観るのがお勧めです。

では以下、感想になります。

 

 

 

【あらすじ】

時は1945年の太平洋戦争末期。特攻隊員の敷島は乗機の不調を訴え大戸島の整備基地に着陸する。着陸した日の晩、整備基地に巨大な恐竜のような生物が現れる。その大戸島に言い伝えられる生物、呉爾羅はそこにいた日本兵を次々と襲い、敷島と整備員・橘の2人を残して部隊は全滅する。

終戦後、日本に戻った敷島は住んでいた町が戦争で壊滅、両親も死んだ事に絶望する。ある日、敷島はひょんな事から戦争で行く当てを無くした女性、典子と出会う。典子は被災時に命を落とした女性から赤ん坊、明子を託されており、行く当ても無かったため敷島の家に居座るようになる。初めは居座りを拒否していた敷島だったが、典子と共同生活をしていく事となる。戦争から町が復興して人々の暮らしが元に戻っていく中、敷島も機雷掃海の仕事に就き家を綺麗に建て直したり、典子も働き口を見つけたりと安定した平和な暮らしを手に入れつつあった。

そんな中、アメリカがビキニ環礁で核実験を実施。数か月後、米国の船舶が被害を受ける謎の事件が発生する。それは核実験の放射能を浴びてより巨大な肉体と強靭な生命力を得た呉爾羅=ゴジラによるものだった。

ゴジラは日本に上陸、戦争から復興した東京を焦土と化していく。戦争で「0」になった日本が今、「-(マイナス)」となるー。

【感想】

太平洋戦争終戦後の日本を舞台にゴジラを描く本作。敗戦から復興した銀座を上陸したゴジラが破壊していく光景、それに対抗できる手段が日本に無い事への絶望感が凄かったです。今回は人間ドラマ中心でその内容も素晴らしく、敗戦から「生き残ってしまった」主人公達が過去の後悔にケリをつけるため、日本を守るためにゴジラに立ち向かうのは見ていて目頭が熱くなりました。

【敗戦から復興していく日本と登場人物達の心】

物語は敗戦直後の日本から始まります。心身共にボロボロで帰ってきた敷島は住んでいた町や空襲で壊滅しているのを目の当たりにし、両親も死んだ事を知りさらに絶望します。その後、ひょんな出来事から転がり込んできた典子と明子と暮らし始め、機雷掃海の仕事でお金を稼げるようになり家も建て直しと、段々豊かな生活になっていきます。敷島も典子も最初は疲れ果てた顔をしていたり粗暴な言葉遣いだったのが町が復興して生活が豊かになっていくにつれて段々綺麗になっていくのが印象的でした。(途中から「ゴジラが来て家ぶっ壊されるんだろうなー」って思ってましたが幸い家は壊されず)。

特に敷島の家の隣に住む澄子さん。息子を戦争で失った中、特攻隊員なのに生き残って帰ってきた敷島に「なんで私の子供が死んだのにお前が生きているんだ」と辛く当たりるのですが、幼いアキ子を見てお米を分けてくれたり世話手伝ってくれたりするようになります。本来はこっちの優しい姿が本当の姿なんだけど、戦争で全てを失って心が粗暴になってしまっていたんでしょう。「生活が貧しいと心まで貧しくなる」という言葉がありますが、敗戦で全て失って多くの人が余裕が無い時代だったのだと思わされました。

ゴジラVS日本】

そして日本が復興してこれからという時にゴジラが現れ東京を破壊します。

ゴジラを倒すために立ち上がったのは元軍人を中心に構成された有志達、言い換えれば戦争を「生き残ってしまった」者達。先の大戦で多くの軍人や若者が国に「死んで来い」と命令されて戦争に動員されました。そんな彼らが今度は自ら志願して国や大切な誰かを守ろうとしており、作戦方針も「誰も死なせない」というものになっています。先の大戦で多くの物を奪われ失った彼らの中で戦争はまだ続いており、特に敷島は大戸島での呉爾羅遭遇によって特攻が無くなり命を取り止めた一方、大戸島の整備班を犠牲に生き残った事への罪悪感や後悔に苦しみ続けてきました。

加えて、本作のゴジラも例によってアメリカの核実験で誕生しており、「ゴジラアメリカによって生まれた怪物」とも解釈できます。ゴジラを倒す事は登場人物たちにとって過去の後悔や戦争の呪縛を断ち切りケリをつける=太平洋戦争の続きでもある訳です。この辺の感覚は日本人じゃないと作れないし理解できない所があるかもしれませんね。海外ではどのような評価がされるかが気になります。

物語序盤、死んだ顔の帰還兵が寿司詰めになった船の甲板から始まった物語が、最後はゴジラを倒して誰1人欠ける事なく笑顔で帰還するという終わり方は、今度は戦いに勝った、大切な者を守る事ができたという事を強く印象付けてくれます。

最後に典子が生きていたのは少しご都合主義が過ぎるかもしれませんが、登場人物がゴジラに挑む時に「誰も死なせない」という覚悟を掲げているのでこれに沿った内容と思いました。もしかしたら今作は典子がもっと用意周到だったのかもしれない

ゴジラの絶望感】

本作のゴジラは今までのシリーズでトップクラスに絶望を与える存在となっています。
能力としては驚異的な再生力、チャージして放つ放射能熱線が挙げられ歴代シリーズとしては標準的な物であります。

しかし本作の舞台は終戦後の日本。戦争で兵器は接収され、アメリカもソ連と揉めたくないから幾らか兵器を返還して「あとはお前らでガンバレ」と助けてくれず。そんな状況でゴジラと戦わないといけないという絶望的な状況が予告の段階で伝わってきます。

シン・ゴジラ」の時もそうでしたが、オキシジェン・デストロイヤーもスーパーXも三式機龍も無いし、倒したり共倒れしてくれそうな怪獣も出て来ない。そんな状況でどうやってゴジラを倒すのかというのは物語の見せ所。

本作ではゴジラを深海に引きずり込んで水圧で潰し、再度急浮上させて水圧減退で再度潰すという作戦を行います。これには驚かされました。同時に、「有り合わせの兵器や物資で最も勝率の高い作戦だが、成功するかは分からない。しかしやらなくてはいけない。」という展開が盛り上がります。

この作戦が科学的にできる・できないは置いといて、登場人物全員が想いを一つにしてゴジラに挑むのはとても熱かったです。

【歴代ゴジラのオマージュ】

本作、歴代シリーズを元ネタにしたと思われるオマージュも色々ありました。以下、私が気づいた・思った箇所。

・大戸島→初代ゴジラで登場した呉爾羅の伝説が伝わる島

・大戸島での呉爾羅と日本軍の戦い→「ゴジラVSキングギドラ」で太平洋戦争の時代にゴジラサウルス(ゴジラの元となった恐竜)と米軍が戦うシーン

ゴジラが銀座を破壊するシーン→初代ゴジラが上陸して破壊したのが銀座。電車を咥えるのも初代のオマージュか

・ビルの屋上からゴジラを撮影・中継するマスコミ記者→同じく初代ゴジラゴジラの様子を中継する記者。この後、放射能熱線で吹き飛ばすまでオマージュするかと思ったらビル倒壊で済ませましたね(熱線はこの後観客に絶望与えるために取っておく)

・敷島が震電ゴジラを誘導する→「ゴジラの逆襲」で主人公・月岡が戦闘機でゴジラを倒す作戦に参加する展開(月岡も元軍人という設定)

・ラストの海中でゴジラの肉片が鼓動を打ち再生していくシーン→「ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃」のラストシーン

 

一部こじつけに近いものもありますが、初代を中心に過去作からのオマージュがいろいろちりばめられています(違ってたらゴメンなさい)。私が気付いてないだけで、もっとたくさんのオマージュがあるかもしれません。

【ミリタリーファン大歓喜?】

本作、高雄、震電など旧日本軍の色んな兵器が色々登場しておりそれがミリタリーファンの間で話題になっているようです。特に高雄は実写映画に登場したのは初だそうで。

私はミリタリー方面にあまり詳しくないのですが、ミリタリー好きな人が観ても楽しめる映画になっているようなので、興味のある方はいかがでしょうか。

【まとめ】

ゴジラ映画の中でもかなり面白い作品になっていると思いました。特撮シーンは勿論、人間ドラマも魅力的になっているのでゴジラや特撮ファンだけでなく一般層の方も楽しめる映画となっています。興味がある人は勿論、ゴジラや怪獣映画だからと敬遠してる人にも一度観ていただきたいです。以上。